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神戸地方裁判所尼崎支部 昭和41年(ワ)650号 判決 1969年7月07日

原告 石田真紀

<ほか二名>

右三名訴訟代理人弁護士 古高健司

被告 鳴尾タクシー株式会社

右代表者代表取締役 三浜輝雄

右訴訟代理人弁護士 小長谷国男

主文

一、被告は原告石田真紀に対し金一〇万円およびこれに対する昭和四一年一二月一七日以降完済まで年五分の金員を支払え。

二、原告石田真紀のその余の請求を棄却する。

三、原告石田義治、原告石田逸子の各請求を棄却する。

四、訴訟費用は原告らの負担とする。

五、この判決は第一項に限り仮に執行できる。

事実

≪省略≫

理由

一、原告石田真紀は、原告義治と原告逸子の間の長女として昭和二三年九月一八日出生し、幼稚園に通っていた頃の昭和四〇年二月六日午後四時一〇分頃、原告ら主張の浜甲子園団地内道路上において、被告保有のタクシー(訴外川子道男運転)に衝突され、右大腿部完全骨折の傷害を蒙り、直ちに西宮市吉本病院に入院、手術を受け、その後日に、同市明和病院に入院、抜釘手術を受けたこと、はいずれも当事者間に争いがない。

二、右負傷により蒙った原告真紀の精神的損害は金五〇万円であるとの原告らの主張に対し、被告は、これを争いかつ同損害は被害者側の過失に基因する旨主張する。按ずるに、

(一)  ≪証拠省略≫を綜合すると、原告真紀の骨折はやがて完全に治癒し何らの機能障害も残さないであろうし、また長さ約七糎の手術痕もしだいに薄れ、成年時にはさして醜くない程度にまで薄くなるであろうことが容易に推認できるから、右の傷害により蒙った原告真紀の精神的損害は、治療期間中における肉体的苦痛、それに伴う休学その他を考慮し、金三〇万円と判定するのが相当である。

(二)  ところで、≪証拠省略≫を綜合すると、本件事故は、原告真紀が前示道路南側の石垣(その上に植木がある)の蔭から出て同道路を横断しようとするに当り、たまたま西進車(加害車)が右方僅か七米余の所まで近着いているにも拘らず、道路端で一時停止をせず、また左右の安全を確認もせず、右手を揚げただけで足ばやに同道路上に歩み出したことも重大な原因をなしていること明白である。≪証拠判断省略≫そして、原告真紀は、当時六歳四月の幼稚園児であったが、この年令ともなれば、特段の事由がない限り、道路を横断する場合の注意事項、すなわち、交差点でもなく横断歩道でもない道路を横断する場合には、横断に先立ちまず左右の安全を確認せねばならぬ、との注意事項を充分認識しており、かつ、これに従って行動する能力を備えているものと解するのが相当であるから、原告真紀としては、この注意を怠ったことが原因ともなって生じた本件事故につき、過失の責を免れることができない。

(三)  前示のとおり被害者の過失が肯認できるところ、被告は、本件の損害賠償として既に金三一八、六八二円を支出していること≪証拠省略≫により明かであるから、これを考慮し、かつ被害者の前示過失を相殺し、被告に負担させるべき原告真紀の慰藉料は金一〇万円に限るをもって相当と判定する。

それで、原告真紀の慰藉料請求のうち金一〇万円は正当であるけれども、その余の部分は理由がない。

三、次に、原告義治、原告逸子の各慰藉料請求について検討する。被害者真紀の傷害が前示認定のとおり相当の重傷であった本件の場合、右両原告の精神的苦痛も相当なものであったことは容易に推察できるのであるが、しかし、同傷害の部位(右大腿完全骨折)から見て、原告義治、原告逸子としては、未だ長女真紀を喪う場合と同様の著しい精神的苦痛を受けたものとは認め難い。それで右慰藉料請求はいずれも理由がない。

四、最後に、原告義治の家政婦に支払った給料同額の損害金請求であるが、原告真紀が吉本病院に入院したのは事故当日から同年四月一三日までの六六泊であること証人吉本盛昭の証言により明かであるところ、他方≪証拠省略≫によれば、被告は原告らに対し家政婦の給料として既に金八五、〇〇〇円(八五日分)を支払っていることが認定できる。したがって、原告逸子が吉本病院で泊っていた間に原告義治が主張どおり家政婦を雇入れたとしても、その給料は、被告において既に支払済である。それで、同原告のこの請求部分も理由がない。

五、よって、原告らの本訴請求中、原告真紀から被告に対し慰藉料一〇万円およびこれに対する訴状送達の翌日であること明かな昭和四一年一二月一七日以降完済まで民法所定遅延損害金の支払を求める部分のみを正当として認容し、その余の請求をすべて失当として棄却すべく、訴訟費用の負担については民訴九二条八九条、仮執行の宣言については同一九六条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 山田義康)

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